5.漏水プールによる被ばく者の死亡


(4)漏水プールの補修作業での被ばく

 さて、非破壊検査要員の喜友名さんが六ヶ所再処理工場で働いたのは、2003年4
月7日から17日までの11日間、6月19日から30日までの12日間、7月1日か
ら29日までの29日間の3回である。1回目の作業では被爆はゼロで、2回目が0.
30mSv、3回目が0.80mSvであった。

 2回目と3回目の被ばく線量が、どのような仕事で生じたかは、現在までのところ明
らかにされていない。被ばく線量は被ばく手帳の記録に基づいて公表されたが、労働現
場の環境、労働状況などが具体的に明らかにされていないので、どのように被ばくした
かが分からないのである。

 なお、非破壊検査とは、"物を壊さずに"その内部の傷や表面の傷、あるいは劣化の状
況を調べ出す検査技術のことである。主な非破壊検査適用物は、原子力発電所・プラン
ト・鉄道・航空機・橋梁・ビル・地中埋設物等であり、主な非破壊検査方法は、目視検
査、放射線透過検査、超音波探傷検査、磁気探傷検査、浸透探傷検査、渦流探傷検査、
ひずみ測定、漏れ試験、アコースティックエミッション(AE)、赤外線検査法等があ
る。

 さて、喜友名さんが働いていた頃の六ヶ所再処理工場は、使用済み核燃料貯蔵プール
の漏水が発覚した後で、様々な箇所の捕集作業に追われている時期と符合する。

 それを示しているのは、平成15年6月24日付けの日本原燃株式会社発表のプレス
リリーで、「使用済燃料受入れ・貯蔵施設及び再処理施設本体の点検状況について」と
いうタイトルであった。この中で、新たに二項目の追加点検が必要になったと発表して
いるが、それは「同貯蔵施設および再処理施設本体で各種センサーなどの機器を取り付
ける「埋め込み金具」の位置ずれ」と「同貯蔵施設の壁面と床や天井が交差する「三隅
コーナー」部分の不適切な溶接」の二項目であることが示されている。その記者会見の
場では、点検する個所は埋め込み金具が数千カ所、三隅コーナーが約百カ所に上ること
も明らかにされた。  この資料の中で、非破壊検査についての記述もある。7ページ
の1行目から5行目までには、「三隅コーナー」部分の点検方法が記されている。それ
を原文のまま紹介すると、「A点検方法 グラインダ痕が確認された箇所について、マ
ルチコイル型フェライト計測装置またはフェライトスコープによるフェライト量測定及
びフェライト量分布測定を行い、2.5%以上のフェライト量が確認された箇所につい
ては超音波探傷検査を実施し、肉盛溶接(溶接部追加)の箇所を抽出します。」と記さ
れている。

 また、埋め込み金物の点検方法については、7ページの下から8行目から2行目まで
に記されているが、「A点検方法 建設時の据付管理状況及び検査の実施状況を検査記
録で確認し、検査記録だけでは埋込金物の移設の有無が確認できない場合には、超音波
探傷検査を実施することによりスタッドジベルの健全性を確認していきます。ただし、
超音波探傷検査でスタッドジベルの健全性が確認できない場合、または構造上の理由に
より超音波探傷検査を実施できない場合は、耐力試験、解析評価を実施することにより
健全性を確認していきます。」と記されていた。

 いずれの場合も、超音波探傷検査を行うということが読み取れる内容である。しか
し、超音波探傷検査というのは、超音波が光のように指向性が鋭く、直進した超音波が
異なった物体又は空隙との境界面や内部に含まれている異質物やキズで反射する性質を
利用し、物体や液体内部の様子の調査をするものである。それだから、超音波探傷検査
では被ばくには結びつかないのである。ただし、その検査箇所が放射能で汚染されてい
れば、検査作業中に被ばくするということはありえるのである。

 さて、添付資料の1の「再処理施設の点検工程」によれば、喜友名正さんが働いた時
期の検査内容が明らかにされている。PWR燃料貯蔵プールの漏えい事象に係る点検作
業が使用済み核燃料受け入れ・貯蔵施設と再処理施設本体で行われた。前者では、先張
り壁コーナーライニングプレートの点検、PWR燃料貯蔵プール漏えい事象に係る追加
点検、埋込金物位置ずれ修正に係る点検が行われ、後者では、埋め込み金物位置ずれ修
正作業に係る点検が行われることになっている。この中で放射能に汚染されていた場所
は、使用済み核燃料貯蔵施設であり、使用済み核燃料を貯蔵したプールの側壁等は放射
化していた。そこの検査を行う際に被ばくしたことが推定される。
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 1.被ばく労働問題について
 2.東海再処理工場での被ばく事例
 3.六ヶ所再処理工場の被ばく事例
 4.なぜ「その他」に被ばく者が多いのか
 5.漏水プールによる被ばく者の死亡
  (1)六ヶ所再処理工場での労働者の被ばく死
  (2)横行する被ばく線量のごまかし
  (3)許容線量は安全か
  (4)漏水プールの補修作業での被ばく
 6.被ばく線量の安全裕度とは
 7.青森県知事が被ばく労働を進めるわけ
 8.被ばく労働をなくすため、原子力産業と決別せよ


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