六ヶ所再処理工場解体新書 連載2

高レベルガラス固化不調で、再処理計画に波紋
  前回に続いて、「再処理工場の概要」から拾って紹介をするつもりでしたが、ちょっ
と面白い記事を浪岡のHさんから教えて戴いたので、皆さんにもお披露目したいと思い
ます。
  「電気新聞」と言えば電力業界紙でありまして、購読料が安くはありません。コマー
シャルも電力会社系列が圧倒的に多くて、いわゆる電力業界内の広報紙的な役割を持っ
ています。そういう点においては、一般紙が今でもチェルノブイリ原発周辺には悲惨な
状況が継続しているのを伝えるときでも、原発周辺の野鳥生物の生命の復興を伝えたり
して、原発の悲惨さを正確に伝えないという片手落ちの面もあります。そういう意味か
らすると、「電気新聞」が伝える情報を丸まる信じるというのは、とても危険な気がし
たりします。
  この新聞が、青森市役所前の日本原燃のPR施設の一角におよそ1年分が積まれてい
ます。1年分と聞くと、大層な量に思われるでしょうが、1部が薄いし、毎日発行では
ないので、40から50センチくらいの厚みで1年分となります。これが以前は1、2
カ月分を積んでいましたが、浪岡のHさんや野辺地のSさん、そして私が行く度に見た
がるし、その度に係の方が奥から持ち出して来るのが面倒になったとみえて、1年分く
らいを常時出しておくようになりました。その「電気新聞」2月2日号と2月4日号
に、Hさんの言う興味深い記事がありました。

2月2日号 「再処理工場竣工、8月に繰り延べ」−処理能力の変更も?
  1面の左側に、1月末の日本原燃(株)兒島社長の繰り延べ発言を踏まえて、高レベ
ル廃液のガラス固化施設の不調から竣工が延びたことを伝える記事が掲載されていま
す。その解説に「難局打開へ英知結集を」というタイトルがついています。その中に、
一般紙が伝えない厳しい見通しがありました。
  『(兒島社長が)「ゴールは見えている。もう一歩という認識だ」とも強調。洗浄、
かくはんを伴う回復運転の手法など、本格操業に向けた技量やノウハウは備わりつつあ
る。
  しかし、再処理工場の性能を十分引き出すため、ガラス固化工程がボトルネックとな
らんないよう慎重に技術を見極めるのも不可欠。今後の局面では、長期的な視点を踏ま
え、あらゆる選択肢を検討しておく必要もあろう。〜使用前検査の前提となる再処理能
力の変更などは、兒島社長も方法論としては「十分考える価値はあると思う」との認識
も示した。
  開発要素の濃いガラス固化技術の確立は、科学的・合理的なアプローチの重要性を増
す。原燃だけでなく、関係各方面における可能な限りの英知の結集が難局を打開す
る。』・・・以上の下線部分は山田が引きました
  以上見て戴いたように、業界紙ですら厳しい指摘が続き、再処理能力の変更を兒島社
長も考えているのは、意外な点です。これだと、年間800トン再処理、ガラス固化体
1000本は、掛け声だけに終わりそうです。つまり、再処理できる範囲で再処理する
と言うので、年間800トンで無理なら、年間100トンでもいいということになりそ
うです(東海村も低い再処理量で推移した経緯もあります)。
 更に「ガラス固化技術は開発要素が濃い」・・・というのは、青森県民に対してもっ
と声を大にして伝えてほしいと思います。日本原燃は、県民に対しては確立した技術を
謳ってきたし、国もそれが実現可能と認識して安全審査を通したのです。そして、青森
県知事も六ヶ所村長も事業者と国を信じてきたはずです。それなのに、実は再処理技術
は未だ開発途上だったとすれば、これは大問題です。改めて、日本原燃の技術を検証し
直して、駄目なものは駄目という新たな判断を国が下すべきであることを示唆してはい
ないでしょうか。
  そして、原燃だけでは駄目なので、面子にこだわらず、日本の英知の結集で難局を打
開すべきというのです。しかし、そのような技術者集団が存在しないから問題が続いて
いるのを、どうして敢えて隠す必要があるのでしょうか。ここは、もっと素直にガラス
固化技術が未完成なことを明らかにすべきだったと思います。 というわけで、この日
の解説は、特に興味深く読めます。

2月4日号 「原子力委に現状を説明」−『ぶざまな姿だ』
  これは、2面にあります。3日に定例会議を開催した「原子力委員会」で六ヶ所再処
理工場について、ヒアリングしたことが掲載されています。その中で、興味深い内容に
ついて、以下に引用して紹介します。
  『(固化セル内での高レベル廃液の滴下の)原因究明と再発防止対策の取りまとめ
後、再び滴下する事象も発生し、その対応をめぐって報告書内容の一部記載を訂正した
ことなどは、近藤俊介委員長が「ぶざまな姿だ」と指摘。再滴下の要因となった配管内
のスラリーの存在は、「想定されていなかったのか」など、廃液漏れを看過できない事
態として、今後の対応を厳しく求めた。
  〜「一回頭を冷やして、ゆっくりやることも必要だ」との指摘もあがった。
  〜近藤委員長は記者団に対して、再処理は事業者の責任で進めて行く基本認識を踏ま
え、最善の努力を求めた。
 一方、技術的な見通しなく早期の竣工を期待するよりはむしろ、着実な稼働を望み、
技術的な課題の克服を強調した。』という手厳しい意見が上がっています。 六ヶ所再
処理工場を動かす理由が、ウラン資源の節約だとか、MOX燃料製造だとか様々に言わ
れますが、近藤委員長は決して「再処理工場の操業が大きな一歩とは認識してない」タ
イプです。なぜなら、高速増殖炉での利用があって、効率的に役立つのがMOX燃料だ
から、それ以前に本格操業することに大きな期待感がないようです。
  それゆえの発言でもあったでしょうが、随分と手厳しい感じですね。私たちが、日本
原燃と交渉しても、「ぶざまな姿だ」などとは言いませんよ。それを臆面もなく、マス
コミの前で話せるのは凄いですね。次ぎに再処理工場でトラブルを発生した際、抗議文
なり要請文なりを書くときに、使ってみたいフレーズではあります。 
  というわけで、安全審査を通したはずの身内からも手厳しい指摘を受ける再処理工場
は、着実な稼働を行える見込みが立つまでは、当分の間はアクティブ試験を中止するの
が先決でしょう。
     以上です


トップへ
戻る